休眠機構の解明

多年生植物であるリンドウは、冬には越冬器官である越冬芽の形で休眠し、成長と休眠を繰り返す事で数年間栽培が可能です。休眠した越冬芽は高い耐冷性と耐凍性を持つため、冬の低温条件下でも生存することができます。従って、越冬芽の休眠誘導はリンドウ栽培にとって重要な鍵となるポイントですが、その機構には不明な部分が多く残されています。本課題では、越冬芽の休眠機構を明らかにし、人為的に休眠調節する技術開発を目指しています。

1. 植物ホルモンを用いた越冬率向上

リンドウの一部品種では、越冬芽の越冬率が低く、株の養成や次年度の栽培に大きな影響を及ぼしています。その原因は、越冬芽が完全に休眠していないためであると推測されました。そこで、休眠誘導に働くことが知られるアブシジン酸(ABA)を越冬芽に処理したところ、越冬率が飛躍的に向上しました。現在、より低コストで効果のある農薬などを用いた方法を試行しています。本成果は、H23年度バイオテクノロジー基礎的研究成果Aとして報告しています。

2. 光波長を利用した萌芽期調節技術

冬芽が休眠から覚める主要因は温度ですが、もう一つの要因として光の関与が知られています。そこで、発光ダイオード(LED)を用いて、異なる波長の光をリンドウの越冬芽に照射したところ、赤色光条件では萌芽が促進され、遠赤色光条件では萌芽が抑制されました。この性質を利用して、萌芽期を調節することで、開花期が調節できる可能性があります。またLED照射によってリンドウの生育を促進させることで、開花期を早める取り組みも行っています。本研究は、JSTから資金を得て行いました。また得られた成果は、H23年度バイオテクノロジー基礎的研究成果Sとしても報告しています。