開花機構の解明
リンドウ栽培にとって一番大事なのは、やはり開花期です。近年の環境変化や天候不順によって、需要期に花が咲かないことが毎年問題となっています。また、育種によって、本来の濃紫色以外の様々な花色を持つ品種が開発されています。その結果、消費者ニーズが年々多様化し、お盆やお彼岸の時期以外にもリンドウを求める声が高まりつつあります。こういった問題やニーズに対応するため、出荷期調節が新たな課題となり、その核となる開花期調節技術が必要とされています。しかし、どうすればリンドウが開花するかは全く明らかとなっていません。本課題では、リンドウの開花期調節技術の確立を最終的な目標とし、それに向けて開花機構及び開花誘導条件の解明を目指しています。
1. 遺伝子レベルからの開花機構の解明
私達は、リンドウの開花がどのように調節されているかを明らかにするために遺伝子レベルの調査を行っています。多くの研究者の報告から、植物は環境変化を認識して花芽の形成(花成)を誘導し、その誘導には多くの遺伝子がかかわっていることが明らかになってきました。私達は、リンドウの花成に関連する遺伝子を単離し、その発現変化と形質転換体の表現型から、花成を誘導する遺伝子GtFT と抑制する遺伝子GtTFL1 が開花期を決定していることを見出しました。
発表論文:Imamura et al. (2011). Plant Cell Physiol.52: 1031-1041.
2. 網羅的遺伝子発現解析
圃場と培養リンドウを用いてリンドウの花成誘導に関わる遺伝子の探索を行いました。RNA-seq解析により、遺伝子のカタログ化、発現プロファイリング情報を得ました。今後、リンドウの開花メカニズムの解明に向けて取組みます。
発表論文: Takase et al. (2022). International Journal of Molecular Sciences 23: 11754
2. 花成誘導遺伝子をマーカーにした開花誘導要因の探索
リンドウの花成がどのような環境に影響されるかが不明な理由として、リンドウは花成までに数ヶ月を要するため、研究が思うように進まなかったことが挙げられます。しかし、私達は花成誘導遺伝子を調べることによって、研究期間を大幅に短縮することに成功しています。現在、温度と日長を中心に調査を進めています。